借金がかさんでしまい、返済ができなくて困っている方は、「個人再生で解決できないだろうか?」と考えているのではないでしょうか?
「借金返済は苦しいけれど、自己破産は嫌だ」と考える方にも、個人再生は人気があります。
ただ、個人再生をするときには、「収入要件」が必要です。
実際に、どのくらいの収入があったら個人再生を認めてもらうことができるのでしょうか?
アルバイトや年金暮らしでも、個人再生できるのか、知りたいということも多いでしょう。
今回は、個人再生をするときにどのくらいの収入が必要になるのか、ご説明します。
1.個人再生を利用できるのは、収入がある人だけ!
個人再生をすると、借金を大幅に減額してもらうことができます。
たとえば、500万円の借金がある場合、最大で100万円にまで減額してもらうことができるのです。
そこで、借金が大きく膨らんでしまい、任意整理でも解決できない場合には、個人再生が非常に有効です。
しかし、個人再生を利用できるのは、基本的に収入がある人だけです。
個人再生の基本となる民事再生法には、「将来において反復継続的に収入を得る見込みがある人」に限って個人再生の利用を認めているからです(民事再生法221条1項)。
また、個人再生の中でも「給与所得者等再生」という手続きでは、「収入の変動が少ないこと」が必要です(民事再生法239条1項)。
つまり、給与所得者等再生の場合には、反復継続的な収入のみならず、その収入が安定していることまで要求されます。
給与所得者等再生とは、サラリーマンや公務員などの給与所得者のみが利用できる、特殊な個人再生の方法です。
このように、個人再生を利用できる人は、一定の収入がある人に限られます。
無色無収入の人は、個人再生を利用することができません。
2.収入がないのに個人再生を申し立てると、どうなるの?
それでは、収入が無い人や足りない人が個人再生を申し立てると、どうなるのでしょうか?
この場合、個人再生の手続き開始決定が下りません。
申立時に収入が足りないと判断されると、手続を進めても再生計画案が認可される可能性がないので、申立が棄却されてしまいます。
また、申立時には収入があるように見えても、実際には足りないケースや、手続きの途中で失業してしまうケースなどもあります。
このように、途中で収入が足りないことが明らかになった場合には、個人再生の手続きが廃止されてしまったり、再生計画案が不認可になってしまったりして、やはり失敗してしまいます。
そこで個人再生を行うなら、当初からしっかりと収入を確保した上で申立に臨むことが重要です。
3.収入の有無は、どうやって判断するのか?
それでは、申立人に収入があるかどうかについては、どのようにして判断されるのでしょうか?
これについては、基本的に債務者が提出した収入に関する資料と家計収支表によって決定します。
3-1.収入に関する資料について
収入に関する資料は、具体的に言うと、以下の通りのものです。
- サラリーマンや公務員などの給与所得者
直近の給与明細書3ヶ月分、賞与明細書、最近の源泉徴収票2年分
- 自営業者
最新の確定申告書の控え2年分
- 年金受給者
年金振込通知書、年金受給証明書など、最新の県民税、市民税の証明書2年分
- 不動産収入など、その他の収入がある人
確定申告書控え2年分、最新の県民税・市民税の証明書2年分
- 児童手当など、行政手当をもらっている人
各種行政手当の受給証明書等
このように、客観的な資料をもって、収入があるかないかを見極めます。
3-2.家計収支表について
収入があるかどうかを判定するため、家計収支表も非常に重要です。
家計収支表とは、債務者の収入と支出をまとめた表のことです。
家計簿のようなもので、左側に収入、右側に支出の内訳と金額を書き込みます。
個人再生の申立時に、直近2ヶ月分の家計収支表を作成して、提出する必要があります。
家計収支表を見ると、月々どのくらいの収入があって、どのくらいの支出があるかがわかります。
収入から支出を引いて、借金支払いに充てられる程度のあまりが出ていたら、基本的に収入要件を満たすと判断されます。
(もちろん、家計収支表に記載されている収入の金額は、提出した給与明細書等の資料の数字と一致している必要があります。)
そこで、家計収支表は、個人再生を進めるときに非常に重要な資料です。
本当に支払ができるかどうかが不安視される事案では、申立後も継続的に提出を要求できることもあるので、きちんと対応しましょう。
4.収入を判断する時期
個人再生で、収入が足りるかどうかの判断が行われるのは、いつのタイミングなのでしょうか?
申立時に収入が足りていたら、後で収入がなくなっても良いのかなど、知りたいという方がいるかもしれません。
個人再生の収入要件は、再生手続の開始時と、再生計画の認可時に審査されます。
また、手続きが開始した後、再生計画を認可するまで、継続して収入を得ているかどうかを確認され続けます。
そこで、個人再生をするときには、申立時にのみ収入があれば良いというものではなく、手続き中、再生計画が認可されるまで、継続的に収入を得続けなければなりません。
途中で失業すると、個人再生を進めることができなくなってしまいます。
また、当初の段階では収入がなくて、後から収入を得るから個人再生を開始してほしい、ということも認められません。
個人再生を利用したいのであれば、当初の段階からしっかりとした職に就き、継続的に収入を得られる状況を作ってから取り組む必要があります。
5.どのくらいの収入が必要か?
それでは、個人再生をするとき、具体的にはどのくらいの収入が必要になるのでしょうか?
「〇〇円以上、などの決まりがあるのでしょうか?」
という質問が多いので、お答えします。
実は、個人再生の収入要件では「年収〇〇円以上」などの数字による制限はありません。
個人再生では、手続き後の債権者への支払ができるかどうかがポイントになるからです。
手続き後の返済に足りる額であれば、それが多くても少なくても良いわけです。
返済額が少なければ、少ない年収でも個人再生を利用できますし、返済額が大きくなる場合には、それに足りる多い年収がないと、個人再生を利用できません。
そこで、個人再生をすると、どのくらいの支払が必要になるのかが、次に問題となります。
この問題は、個人再生で、どのくらいまで借金を減らせるかということと関わります。
個人再生では、減額された借金を、原則3年で支払っていくことになるため、支払総額が確定したら、月々や年間の負担額も明らかになるためです。
個人再生では、基本的な最低弁済額が決まっています。
- 借金額が100万円まで…そのまま
- 借金額が100万円を超えて500万円まで…100万円に減額
- 借金額が500万円を超えて1500万円まで…5分の1に減額
- 借金額が1500万円を超えて3000万円まで…300万円に減額
- 借金額が3000万円を超えて5000万円まで…10分の1に減額
そこで、上記の金額を計算して、それを36回(3年間の月数)で割ると、毎月の返済金額を計算することができます。
基本的に、毎月その金額よりも大きなあまりが出ていたら、個人再生ができるということになります。
なお、申立人に財産がある場合、所有している財産以上の金額は返済に回さなければならないので、上記の金額より高額になる可能性があります。
また、どうしても3年では返済が難しい場合などには、返済期間を5年に延ばしてもらえるケースもあります。
その場合には、返済総額を返済期間の月数である60ヶ月で割り、計算します。
6.どのくらいの収入が必要?モデルケース
実際にどのくらいの収入が必要になるのか、モデルケースを確認してみましょう。
たとえば、借金が100万円まで減額される場合には、それを3年で返済するので、毎月の支払額は27000円あまりとなります。
そこで、毎月30000円弱の余剰が出るくらいの収入があれば、収入要件を満たすと判断されます。
反対に、あまりが2万円しか出ていなかったら、収入が足りないと判断されてしまいます。
個人再生の収入要件では、同じ借金額でも人によって満たす場合と満たさない場合が出てきます。
たとえば、年収300万円の人でも、1人暮らしで慎ましく生活していたら、毎月3万円程度の支払はできるでしょう。
しかし、家族を養っていたら、毎月1万円も余らないかもしれません。
そこで、個人再生をするときには、「年収」よりも「毎月どのくらい余剰を出せるか」に注目した方が、向き不向きを判断しやすいです。
自分では適切に判断できない場合には、給与明細書や源泉徴収票、簡単な家計収支表を作成して、弁護士や司法書士に見てもらうと良いでしょう。
7.給与所得者等再生では、収入の安定性も必要
個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という、2種類の手続きがあります。
小規模個人再生は、個人再生の原則的なパターンで、サラリーマンに限らず、多くの人が利用することのできる手続きです。
たとえば、自営業者やアルバイト、パートや年金生活者等でも、小規模個人再生なら利用できる可能性があります。
これに対し、給与所得者等再生とは、サラリーマンや公務員などの給与所得者のみが利用することのできる個人再生のパターンです。
自営業者やアルバイト、パートなどの人は、基本的に給与所得者等再生をすることはできません。
給与所得者等再生をするときには、小規模個人再生よりも、さらに収入要件が厳しくなります。
この場合、一定の収入が継続しているだけではなく、安定していることまで要求されるからです。
たとえある年の年収が高額であっても、年による変動が大きすぎると、給与所得者等再生の利用は難しくなります。
給与所得者等再生を利用できるのは、年単位での収入に5分の1以上の変動がないケースです。
たとえば、ある年の年収が500万円で、翌年の年収が400万円の場合であれば、変動幅は5分の1以内なので、給与所得者等再生を利用することができます。
これに対し、翌年の年収が350万円にまで減ってしまったケースでは、変動幅が5分の1を超えているので、給与所得者等再生ができないことになります。
小規模個人再生の場合には、ここまで高い安定性は不要です。
8.どのような人が、個人再生の収入要件を満たすのか?
以下では、具体的にどのような職業や立場の人が、個人再生の収入要件を満たして手続きを利用することができるのか、確認していきましょう。
8-1.サラリーマン、公務員のケース
まずは、サラリーマンや公務員の場合です。
これらの人であれば、ほとんど問題なく個人再生を利用することができます。
小規模個人再生だけではなく、給与所得者等再生をすることも可能です。
ただし、収入が低すぎて手続き後の返済をするに足りない場合には、個人再生ができません。
また、サラリーマンの給与体系は、さまざまです。
たとえば、歩合制や年俸制が採用されていて、給料の変動が激しい人もいます。
このような場合、年間の給料の変動幅が5分の1以内であれば、給与所得者等再生を利用することができますが、5分の1を超えてくると、給与所得者等再生は認められず、小規模個人再生しかできなくなります。
給与所得者等再生と小規模個人再生、どちらが得になる?
サラリーマンや公務員の場合、
給与所得者等再生ができるからといって、必ずこちらを選ばなければならないというものではなく、小規模個人再生を選択することも可能です。
それではサラリーマンの場合、給与所得者等再生をするのと小規模個人再生をするのと、どちらにメリットが大きいのでしょうか?
ケースにもよりますが、小規模個人再生の方が得になる場合が多いです。
それは、給与所得者等再生の方が、債権者への支払額が大きくなりやすいためです。
小規模個人再生では、債権者への返済額は、以下の2つのより高い金額となります。
- 最低弁済額
- 債務者が所有している財産の評価額
ところが、給与所得者等再生の場合には、以下の3つのうち、最も高い金額となります。
- 最低弁済額
- 債務者が所有している財産の金額
- 可処分所得の2年分
つまり、給与所得者等再生の場合、「可処分所得の2年分」とう要件が加わるので、小規模個人再生よりも、債権者への支払額が上がる可能性があります。
可処分所得というのは、収入から税金や保険料等の必要な支払をした残りの金額で、債務者が自由に処分できる部分のことです。
そして、実際に可処分所得の2年分を計算してみると、最低弁済額や債務者の手持ち資産の総額よりも高額になるケースが多いのです。
そこで、給与所得者等再生を利用すると、小規模個人再生をするよりも大きな借金が残ってしまうこととなり、小規模個人再生の方が得になりやすいです。
残る借金の金額が小さければ、その分収入が低くても、個人再生できる可能性が出てきます。
このようなことから、サラリーマンや公務員が個人再生をするときにも、小規模個人再生を選択することが多いです。
給与所得者等再生をする意味
それでは、あえて給与所得者等再生を利用することに、どのような意味があるのでしょうか?
それは、「債権者の同意が不要になる」ことです。
個人再生をするときには、最終的に裁判所に再生計画案を提出し、認可してもらわなければなりません。
ただ、債権者の過半数が再生計画案に反対した場合には、個人再生手続きが廃止されてしまうので、認可してもらうことができなくなります。
給与所得者等再生の場合、債権者による決議が行われないので、再生計画が否決されるおそれがありません。
そこで、大口の債権者が反対している場合や、多数の債権者が反対している場合には、給与所得者等再生を利用する意味があります。
給与所得者等再生を利用すべき場面は、以下のようなケースです。
- 大口の債権者が、個人再生に反対している
- 多数の債権者が、個人再生に反対している
- 収入が安定していて、高収入
- 可処分所得の2年分を計算してみたら、自分の収入から支払える範囲内(収入要件を満たしている)だった
サラリーマンや公務員が、小規模個人再生か給与所得者等再生のどちらが良いか迷ったら、参考にしてみて下さい。
8-2.アルバイト、パートのケース
アルバイトやパート収入の場合、サラリーマンに比べて収入が安定しません。
定職に就けず、転職を繰り返している方もいるでしょう。
このような場合でも、個人再生の収入要件を満たすのでしょうか?
これも、ケースによります。
アルバイトやパートだからと言って、個人再生を利用できないわけではありません。
そこで、アルバイトやパートであっても、比較的安定して仕事を続けてきており、今までの経緯などからしても、今後継続的に収入を得られる見込みが高いのであれば、個人再生をすることができます。
また、アルバイトやパートの場合、収入が安定していて、年収の変動幅が5分の1以下である場合には、給与所得者等再生を利用することも可能です。
これに対して、同じアルバイトやパートでも、返済予定金額に対して収入が少なすぎる場合には、個人再生を利用することができません。
また、これまで転職を繰り返していてようやく就職したばかりのケース、個人再生の手続き中にも転職を繰り返しているようなケースでも、将来にわたって継続的に収入を得られる見込みが低いと判断されるので、やはり個人再生を利用することができません。
アルバイトやパートの場合、個人再生ができるかどうかは個別の事案によって大きく判断が異なるので、自分の状況で個人再生できるか知りたい場合には、弁護士や司法書士にアドバイスを求めることをお勧めします。
8-3.年金生活者のケース
年金受給者が個人再生をすることは可能なのでしょうか?
たとえば、会社をリタイアしたけれどもまだ住宅ローンが残っていて借金してしまったようなケースや、家賃や病院代の支払のために借金してしまったようなケースでは、高齢でも個人再生を利用したいということがあります。
年金生活者の場合には、個人再生を利用することができます。
まず、年金は「収入」と判断されます。
そして、年金収入は、日本年金機構から支払われるので、非常に安定していますし、確実性があるからです。
また、年金収入は安定性が高いため、「給与所得者等再生」も利用することができます。
ただし、借金総額に対し、収入金額が少なすぎるケースでは、個人再生の収入要件を満たさなくなってしまいます。
その場合には、小規模個人再生すらできなくなります。
このように、年金生活者の場合にも、収入状況と借金の状況により、個別的なケースに応じた判断が必要です。
8-4.個人事業者のケース
個人事業者の場合にも、個人再生をすることは可能です。
ただし、個人事業では、収入の安定性を確保することが困難なので、利用できるのは小規模個人再生のみです。
給与所得者等再生を利用することはできません。
また、赤字の場合などには、小規模個人再生も難しくなることがあります。
8-5.農業従事者のケース
農業を行っている場合、個人再生することは可能なのでしょうか?
この場合にも小規模個人再生であれば、利用することができます。
ただ、農家の場合、天候やその他の要因により、豊作の年もあれば不作の年もあり、年収の安定性を保つのは困難です。
そこで、給与所得者等再生を利用することはできません。
8-6.有期契約の社員のケース
会社で働く人の中には、有期契約の人がいます。
たとえば1年や2年などの契約期間を定めて働く人のことです。
このように、労働期間が区切られている有期契約の社員の場合、将来に渡って収入を継続的に得られるとは言えないので、個人再生の収入要件を満たさないのでしょうか?
この場合、期間が切れたら収入がなくなることを重視すると、たとえ小規模個人再生であっても利用することは難しそうです。
ただ、期間終了後も期間を延長して継続雇用してもらえることもありますし、別の企業に再就職することも十分に考えられます。
そこで、これまでの経緯や現在の就業状況などからして、契約期間終了後の継続雇用や再就職の見込みが明るい場合には、個人再生を利用できる可能性があります。
契約期間後、一定の失業期間が発生することを見越し、失業期間中にもある程度なら返済を継続出来ることを証明できると(十分な貯蓄がある場合など)、なおさら個人再生を認めてもらいやすいです。
ただし、有期契約社員の場合、小規模個人再生が限度であり、給与所得者等再生を利用することは難しいでしょう。
8-7.派遣社員のケース
派遣社員は給与所得者ではありますが、有期契約の社員と同様、契約期間が決まっていることが多く、将来継続的に収入を得られるかどうかが問題になります。
ただ、派遣社員の場合、派遣元と派遣契約をしており、現在の派遣先との契約が終了した後も、新たに派遣先を紹介してもらえる可能性が高いです。
また、派遣期間が延長される可能性もありますし、派遣先で正社員になる道もあることから、一般的に、有期契約の社員よりは収入が安定していると考えられます。
そこで派遣社員の場合、小規模個人再生であれば、利用できる可能性が高いです。
給与所得者等再生を利用できるほどの収入の安定性があるとはみなされないため、給与所得者等再生はできません。
8-8.専業主婦のケース
次に、専業主婦の場合にどうなるのか、見てみましょう。
専業主婦でも、サラ金やクレジットカードで借金をしてしまい、個人再生をしたいという肩はおられます。
専業主婦は、自分には収入がありませんが、家計を管理しており、夫の収入から借金返済できることも多いです。
そのような場合、主婦が個人再生をすることはできるのでしょうか?
これについては、難しいです。
個人再生では、あくまで本人に継続した収入があることが要求されます。
夫の給料から返済するというのでは、収入要件を満たすことはできません。
ただし、主婦でもパートに出ると、一定の収入を得ることができます。
そして、家計全体として、個人再生後の債権者への支払ができるだけの余剰が出ているなら、個人再生をすることは可能です。
そこで、主婦が個人再生を利用したいなら、まずはパートに出て一艇の収入を得られるようにすると良いです。
なお、任意整理であれば、債務者自身の収入がなくても手続きできるので、専業主婦が夫の給料から支払をする予定であっても、問題なく利用することが可能です。
8-9.失業中のケース
失業中で無職になっている人の場合、個人再生を利用することはできないのでしょうか?
たとえば、元サラリーマンの人などの場合、雇用保険を受けとっていることも多いですが、雇用保険を収入として、個人再生の収入要件を満たすことはできないの?という疑問の声が聞かれます。
ただ、雇用保険の受給額はさほど高額ではありませんし、受けとれる期間も90日から330日までと、限定されています。
そこで、雇用保険があるからと言って「継続的な収入がある」とは言えず、個人再生の収入要件を満たすことはできません。
ただし、失業中とは言っても、たまたま一時的に失業しているだけで、すぐに就職可能な場合もあります。
たとえば、すでに新たな勤務先に内定している場合などでは、将来にわたって継続した収入を得られる可能性が高いですし、就職先によっては、収入が安定することも十分期待できます。
そこで、再就職できる蓋然性が高いケースでは、たとえ失業中のケースでも、小規模個人再生だけではなく給与所得者等再生も利用できる可能性があります。
8-10.生活保護受給者のケース
最後に、生活保護受給者のケースを、確認しましょう。
生活保護受給者は、毎月自治体から生活保護のお金をもらっています。
これは、外形的に見ると、年金生活者に似ています。
生活保護のお金も、非常に安定していますし、継続的に受け取れる見込みが高いと言えます。
それならば、生活保護受給者は、小規模個人再生や給与所得者等再生を利用できるのでしょうか?
残念ながら、これは認められません。
生活保護費は、人の最低限度の生活を維持するのにぎりぎりの、最低限の支給という建前であり、あまりが出るようなものではありません。
生活維持のためのお金なので、借金返済に充てることは、そもそも予定されていません。
生活保護費をこっそり借金返済に充てていると、生活保護をストップされてしまうおそれもあります。
そこで、生活保護費を収入として、債権者への支払に充てることは許されません。
生活保護の方が借金をした場合には、自己破産によって解決するしかありません。
まとめ
今回は、個人再生に必要な収入要件について、解説しました。
個人再生をするときには、反復継続した収入が必要ですし、給与所得者等再生をするときには、その収入が安定していることも必要です。
自分のケースで個人再生ができるかどうかがわからないときには、専門の弁護士や司法書士に意見を聞いてみることが役立ちます。
まずは、弁護士事務所や司法書士事務所のウェブサイトをチェックして、債務整理に力を入れている事務所を探しましょう。
そして、良さそうな事務所が見つかったら、無料相談を利用して、アドバイスを受けると良いでしょう。