個人再生と自己破産の「官報公告」とは?

官報

出典:インターネット版官報

借金が返せなくなったとき、個人再生をすると借金を減らしてもらうことができますし、自己破産をすると借金をなしにしてもらうことができます。

ただ、個人再生や自己破産をすると、「官報公告」されてしまうことが知られています。

官報公告とは、政府が発行している機関誌に情報公開されてしまうことですが、官報公告されると、どのような不利益があるのでしょうか?

今回は、個人再生や自己破産をしたときの「官報公告」について、解説します。

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1.官報とは

「官報公告」というのは、官報に破産者や再生債務者(個人再生を申し立てた人)の情報が掲載されることですが、そもそも「官報」とは何なのでしょうか?

「聞いたことがない」、という方も多いでしょう。

官報は、政府が発行している新聞のような紙面です。
知らない人が多いですが、毎日発行されています。

掲載されている情報は、法律や条令などに関するものや裁判所の決定に関するものなど、無味乾燥なものばかりです。

一般の人が読んで、おもしろいと感じるものではありません。
役場などでは定期購読されていることがあります。

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2.官報公告とは

官報公告は、こうした「官報」に、さまざまな情報を掲載することです。
自己破産や個人再生をすると、破産者や再生債務者の情報が、官報公告されます。

2-1.官報公告で掲載される内容

官報公告をされるとき、具体的にはどのような情報が掲載されるのかが問題です。

自己破産の場合

自己破産の場合には、以下のような情報が掲載されます。

  • 破産者の氏名
  • 破産者の住所
  • 決定の内容(破産手続き開始決定または免責決定)
  • 事件番号
  • 破産管財人の名称
  • 破産管財人の事務所
  • 債権者集会の期日
  • 免責に関する意見申述の期日

個人再生の場合

個人再生の場合には、以下のような情報が掲載されます。

  • 再生債務者の氏名
  • 再生債務者の住所
  • 決定の内容
  • 事件番号
  • 債権届出の期間
  • 一般異議申述期間

債務者や再生債務者のメールアドレスや電話番号は、掲載されません。

2-2.官報公告されるタイミング

自己破産や個人再生したとき、官報公告されるのは、いつのタイミングなのでしょうか?

自己破産の場合

自己破産の場合には、以下の2回です。

  • 破産手続き開始決定があったとき
  • 免責許可決定があったとき

それぞれの決定があった後、2週間くらいしてから官報公告されます。

個人再生の場合

個人再生の場合には、以下の3回です。

  • 再生手続き開始決定があったとき
  • 書面決議に付する決定があったとき
  • 再生計画の認可決定があったとき

自己破産の場合と同様、それぞれの決定があった後2週間くらいしてから官報公告されます。

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3.官報公告の目的

自己破産や個人再生をすると「官報公告」するのは、何のためなのでしょうか?

これは、自己破産や個人再生が行われていることを、広く世間に知らしめるためです。

自己破産をするときには、すべての債権者を対象にしなければなりません。
もし漏れている債権者がいたら、届け出てもらう必要があります。
個人再生の場合にも同じです。

官報は、誰でも閲覧することができるので、官報公告をすると、一応「日本中の人に自己破産や個人再生について知らせた」ことにできるのです。

ただ、後でも述べますが、実際には官報を読んでいる人などほとんどいませんから、官報公告によって、世間に広く自己破産や個人再生を知らしめる効果はありません。
このようなことは、行政でよくある「建前」です。

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4.官報の閲覧方法

「官報なんて、今まで見たことがない。どこに行ったら読めるの?」

そう思った方も多いでしょう。

官報を読む方法を、ご説明します。

4-1.ネットで閲覧する

官報を見てみたいとき、最も簡単で手っ取り早い方法は、ネット上で閲覧をすることです。

まずは、官報の公式ウェブサイトを開きます。

ここでは、過去30日分の官報を無料で読むことができます。
それより古いものを読みたい場合には、有料となります。

そこで、日にちを指定して、その日の官報を開きます。
すると「本紙」「合議」「政府調達」があります。
「特別号外」がある日もあります。

個人再生や自己破産の情報が掲載されているのは、「本紙」です。
本紙を開くと、後ろの方に「公告」という欄があります。

公告欄には、相続や失踪、公示催告、除権決定などの項目があり、最後のところに「破産」「免責」「個人再生」の情報が掲載されています。
破産や個人再生のページだけでも10~20ページくらいあって、毎日数百件の破産者や再生債務者の情報が官報公告されています。

4-2.図書館で読む

官報を紙で読みたい場合には、図書館に行くと、閲覧できます。

ただし、すべての図書館に官報が置いてあるわけではありません。
また、置いてある官報のバックナンバーは、1年分くらいです。

官報はデジタル化されているので、図書館で、コンピュータによる官報検索サービスや閲覧サービスを利用することも可能です。
国会国立図書館に行くと、基本的にすべての官報を読むことができます。

4-3.官報販売所で購入する

官報を購入することも可能です。官報は、全国にある「官報販売所」で売られているからです。
官報販売所の一覧は、こちらから調べることができます。

また、官報は、定期購読をすることも可能です。ネット上で申込みができます。

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5.官報の情報を消すことはできる?

誰でも官報にアクセスできるなら、自分の名前や住所が官報に載るのは気持ちが悪いものです。

「官報に載った情報を、消すことはできないのか?」と思った方がいるかもしれません。
官報公告された場合、それを消すのは不可能です。

官報は、新聞と同じようなものです。
いったん新聞に掲載された情報を、後から消すことはできないですよね?

刊行誌というものは、基本的に発行したら終わりですし、あとから訂正版が発行されるということもありません。
また、破産や個人再生の情報が官報に公告されるのは、決まったことですので、「私だけ載せないでください」などという特別扱いはできません。

官報公告されたら、基本的にそれを静観し、ときが経って誰かに見られる可能性が低下していくのを待つしかありません。

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6.官報は、誰が見ているの?

官報に掲載された情報を消すことができないなら、せめて誰にも見られたくないものです。
官報を誰かが見ることはあるのでしょうか?

お察しの通り、一般の人で官報を読んでいる人は、ほとんどいません。
読んでいるのは、一部の業者など、破産情報や再生債務者の情報をチェックしなければならない人だけです。

具体的には、以下のような人が、官報を読んでいる可能性があります。

  • 市区町村役場や税務署

市町村役場や税務署などでは、官報を定期購読して、所内に官報を置いていることがあります。

ただ、実際にそこで働いている職員が官報を読んでいるというわけではありません。
「役所に勤めている友人がいるから、官報公告されたら知られてしまうかも!」という心配は、通常は不要です。

  • 信用情報機関

信用情報機関とは、個人のローンやクレジットカードに関する情報(個人信用情報)を保管している専門機関です。
信用情報機関は、自己破産や個人再生で官報公告された人の個人信用情報に、事故情報を登録します。
事故情報を登録されたら、その人は、ローンやクレジットカードを使えなくなる、という仕組みになっています。

そこで、信用情報機関の担当者は、官報をチェックして個人信用情報に事故情報を登録する作業を行います。

ただ、すべての信用情報機関において、官報のチェックが行われているわけではありません。
政府が指定する指定信用情報機関は、JICCとCIC、KSCの3つですが、これらのうち官報公告の情報をチェックしているのは、KSCのみです。

  • 闇金業者

闇金業者も、官報公告をチェックしていることがあります。

こうした業者は、お金を貸すのが商売です。
そして、自己破産や個人再生をする人は、借金癖があることも多いです。

また、自己破産や個人再生をした後は、いわゆる「ブラックリスト状態(借金ができなくなる状態)」になるため、まともな金融業者では借入ができなくなります。
貸してくれるのは、闇金くらいですから、闇金にとって、こうした人々は上顧客です。

そこで、官報公告をチェックして、破産者や再生債務者に借金の勧誘をしようとします。

  • 不動産業者

不動産業者も、官報をチェックしていることが多いです。

不動産業者は、破産者が所有している不動産の売却に関わるために、官報公告を閲覧します。
破産者が不動産を所有している場合、不動産を売却して現金化しなければなりません。
その作業は、破産管財人が行います。

不動産業者は、この売却の手続きを仲介して、仲介手数料をもうけたいと考えています。
そこで、破産手続き開始決定があると、選任された破産管財人に連絡を入れて、「不動産はないですか?」「売るなら、弊社に仲介をお任せ下さい」などと言って、売り込みをかけます。
そのための官報チェックです。

  • リサイクル業者、不用品処分業者

リサイクル業者や不用品の処分、片付け業者なども、官報公告をチェックすることがあります。

これらの業者の目的も、やはり破産者の財産処分にかかわるためです。
破産者が、リサイクルできるものを持っていたら、リサイクル業者が破産者からものを買い取ることができますし、破産者のテナントや事業所を明け渡すとき、不用品があったら処分しなければなりません。

片付け業者が必要になることも多いです。
そこでこうした業者も、不動産業者と同じように、破産手続き開始決定があると、破産管財人に連絡をして「不用品はお任せ下さい」などと売り込みをかけます。
そのための官報チェックです。

  • 警備会社や保険会社、旅行業者や金融業者など

警備会社や保険会社、旅行業者や金融業者なども、官報をチェックする可能性があります。

それは、自社の従業員やこれから応募してくる人が、自己破産していないかどうか確認するためです。

自己破産には、「資格制限」があります。
資格制限とは、一定の職業につくことを制限されることです。
制限される職業の中に、警備員や生命保険の外交員、旅行業者や貸金業者、質屋が含まれています。

そこで、こうした業者は官報をチェックして、資格のない人を雇わないように確認します。
ただ、すべての業者がチェックしているわけではありませんし、どこまで厳密にチェックしているかも、業者によって異なります。

こうした人々や機関は、趣味や個人的な理由ではなく、業務上の必要性から官報を購読しています。

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7.官報公告で破産や個人再生がバレる可能性

官報公告が行われると、日本中の人が読む可能性があります。

すると、官報公告されたら、周囲の人に自己破産や個人再生を知られてしまうことがあるのでしょうか?

7-1.官報を読んでいる人はほとんどいない

実際に、官報公告をされることによって自己破産や個人再生がバレる可能性は、ほとんどありません。

それは、官報を読んでいる人が非常に少ないからです。

官報は、読んでもおもしろいと思えるような情報が掲載されていないので、一般の人は購読しません。
いつでもネット上にて無料で閲覧できるのですが、存在すら知られていないのが現状です。

また、官報は毎日発行されており、破産者情報や再生債務者の情報は、最も後ろの欄にまとめて載せられているだけです。
1日数百件の破産や再生事件がある中で、わざわざ特定の人を捜し当ててくる人もいません。

業者が特殊な目的を持って破産者情報や再生債務者の情報をチェックするくらいのものなので、官報公告されても、勤務先やサークル、友人や子どもの学校関係の人、家族などにバレるおそれは限りなく0に近いです。

7-2.実名検索でバレる?

そうだとしても、ネットでは「実名検索」ができます。

官報がネット上に公開されているなら、「実名検索したときに、引っかかってくるのではないか?」と心配になるかもしれません。

この点についても、ほとんど心配不要です。
インターネット官報の情報内容は、PDFのようなデータになっているので、その中の個別のワードで検索することができないからです。

実名検索しても、インターネット官報に掲載されている情報がヒットすることはありません。
ただ、官報には、有料の閲覧サービスがあります。有料の場合には、内容を検索することができるので、実名検索されると見つけられる可能性があります。

有料版は、1部1000円~2000円です。ただでさえ読んでいる人が少ない官報ですが、わざわざ有料購読する人は、さらに少なく、本当に一握りです。
業者でさえ、わざわざ有料版を購入してない例が多いでしょう。

そこで、実名検索によっても、破産情報や個人再生の情報を探り当てられる心配はないと言って良いのです。

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8.官報公告されるデメリット

誰にも知られないなら、官報公告されても、特にデメリットはないのでしょうか?

8-1.個人信用情報に事故情報が登録される

官報公告には、2つデメリットがあります。

1つは、個人信用情報に事故情報が登録されてしまうことです。
個人のローンやクレジットカードに関する情報である「個人信用情報」は、信用情報機関によって管理されています。

信用情報機関の中でもKSC(全国銀行個人信用情報センター)は、官報公告された破産者や再生債務者の個人信用情報に「事故情報」を登録して、以後10年間保管します。
個人信用情報に事故情報が登録されていると、ローンやクレジットカードの審査に通らなくなるので、官報公告されることにより、債務者は、10年間借金ができなくなる可能性があります。

銀行や信用金庫などの金融機関はKSCに加盟しているので、特にこういった金融機関から住宅ローンを借り入れる際などに障害となります。

8-2.闇金からDMが来る

官報公告のもう1つのデメリットは、闇金からの勧誘です。

破産者や再生債務者は、闇金にも手を出しやすい傾向があるので、闇金は、破産者や再生債務者を狙います。
そこで、闇金は、官報公告の破産者情報や再生債務者の情報をチェックして、手続きが終わると、借金勧誘のDMを送るのです。

こういったハガキや書類には「ブラックでも借りられます」「即日融資可」「保証人不要!」などと書いてあります。
当初は無視していても,何らかの事情でお金が必要なときには、ついつい手を出してしまいがちなので、注意が必要です。

自己破産後に闇金から連絡が来るのを止めることは難しいので、自主的に「闇金は利用しない、借金は二度としない」という気持ちを強く持つことが大切です。

9.破産者名簿でも、破産はバレない

官報公告によっては周囲に破産や個人再生を知られることがなくても、「破産者名簿」によって知られてしまうのでは?と心配される方がいます。

破産者名簿とは、どのようなものなのでしょうか?

これは、破産した人の情報が載っている名簿です。
市町村が管理しています。
官報とは異なり、所外に公開されることはありません。
そこで、破産者名簿を閲覧する方法はありません。

また、破産者名簿に名前が掲載されるのは、破産をしても「免責を受けられなかった人」だけです。
免責とは借金が0になることですから、免責を受けられなかったというのは、自己破産に失敗したということです。

破産する人の中でも、大多数は無事に免責許可決定を受けているので、実際に破産者名簿に名前が残る人というのは、ほんの少しです。
以上のように、自己破産をしても、そもそも破産者名簿に名前が載ることが少ないことと、破産者名簿を閲覧する方法がないことから、破産者名簿が原因で周囲に自己破産がバレる心配をする必要はありません。

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10.官報公告されない債務整理

官報公告されても家族などに自己破産や個人再生を知られるおそれは少ないです。

それでも、個人信用情報に事故情報が登録されたり闇金からDMが来たりするのは避けたいし、名前が公表されること自体に抵抗があるケースもあるでしょう。

官報公告を避けながら借金問題を解決する方法は、ないのでしょうか?

この場合「任意整理」をすることをお勧めします。
任意整理は、裁判所に申立をせず、債権者と個別に直接話し合う手続きです。

すべて債権者に告知する必要などまったくないので、官報公告はありません。
完全に秘密で、手続きを進めることができます。

ただし、任意整理をした場合でも、個人信用情報に事故情報が登録されます。
任意整理の場合、自己破産や個人再生よりも情報の登録期間が短く、だいたい5年~7年くらいです。

「それでもいいから、やっぱり官報公告は気持ち悪い」という方は、一度、弁護士や司法書士に任意整理の相談をしてみると良いでしょう。

まとめ

今回は、自己破産や個人再生を行うときの、「官報公告」について、解説しました。

自己破産や個人再生をすると、政府が発行している「官報」という機関誌上に、2~3回、氏名や住所などが公開されてしまいます。

実際に官報を読んでいる人は、一般にはほとんどいませんし、ネットの実名検索でも官報の掲載情報は引っかからないので、たとえ官報公告されても、家族や勤務先にバレるおそれはほとんどありません。

ただ、闇金からのDMが届くなどの不利益はあります。
どうしても官報公告を避けたい場合には、任意整理という方法もあるので、弁護士や司法書士などの専門家に相談してみると良いでしょう。

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